レコード盤

PMCとは?

ポピュラーミュージックの殿堂
Jukebox

金沢工業大学PMCポピュラー・ミュージック・コレクションは、 アート性に富むレコード・ジャケットの数々が、本学学生の感性を 刺激することを期待して1992年(平成4年)にスタートしました。

金沢工業大学では、科学Science・技術Technology・工学 Engineering・数学Mathmaticsに芸術Artを加えた総合的な工学教育、 STEAM教育を行うことで、創造性や問題解決能力を育むことを目的 としています。

PMCは立川直樹氏、故福田一郎氏をはじめとする音楽評論家の方々 や、全国の愛好家の方々から相次いで寄贈いただき、全国でも珍しい ポピュラー・ミュージック・アーカイブとして知られています。

アナログ・レコードの
人気再燃
Jukebox

今またアナログ・レコードが世代を問わず大きな注目を集めています。ストリーミング配信サービスが音楽の聴き方の主流になっている中、この現象を不思議に感じる一方で、納得できる一番の理由として、レコード・ジャケットのアートワークが持つ価値と意義が挙げられるのではないでしょうか。

1877年にトーマス・エジソンが録音再生機‘フォノグラフ’ を発明以来、私たちはいつでも好きな時に好きな場所で音楽を楽しむことができるようになりました。19世紀後半からの科学技術の目覚ましい進歩を背景に、1948年には米コロムビア・レコードがポリ塩化ビニール製のLP盤(Long Play)を発売し、片面5分程度だった収録時間は30分と、長時間再生と音質向上が実現しました。このLP盤の登場こそが、音楽が表現の場としての可能性を拡大する極めて重要な役割を果たしたのです。

Jukebox

LP盤登場以前のレコード(SP盤=Standard Play)は、紙袋(スリーブ)に直に入った状態でレコードショップの棚で売られていました。スリーブは円形に切り抜いてあり、レコード盤の中心に貼られているレーベルが見えるようになっていて、誰のなんという曲が入っているレコードなのかを、レーベルのクレジットを見て選んでいました。1940年代になってカラフルなペーパーカバーが登場してジャケット・アートの黎明期となり、LP盤が登場したことでカバーの素材はより丈夫な厚紙になって現在に至ります。初期のジャケットデザインは、やはり誰のなんというレコードなのかがすぐに分かる、ということが重要で、ミュージシャンの名前と曲名、顔写真というパターンでしたが、徐々にカラフルなイラストや精緻なグラフィック、官能的・刺激的な写真、技巧を凝らしかつ美しいタイポグラフィなど、その時代に並走した映画や文学、ファッションをはじめ、科学技術とともにあらゆるクリエイティビティと刺激し合ってきました。

その原動力になったのは若者たちのイノベーション精神でした。リーゼントヘアにギターを掻き鳴らして叫び歌う姿と、ピンクとグリーンというド派手な彩色のElvis Presleyの文字でデザインされたエルヴィス・プレスリーの1stアルバムは、ロックンロールと若者文化の爆発と熱狂の瞬間を留めています。カウンターカルチャーを内包するサイケデリック・アートの極彩色、見る者の深層心理にまで訴え、ジャケット・アートを芸術の域に押し上げたヒプノシスデザインに至る30センチ四方のキャンバスは、クリエイターたちにとってそれまでにない自由な創造、実験、探求の場となり、音楽が本来持っているイマジネーションに視覚を加えました。単なる聴き手だった私たちは、より多くのメッセージを作り手から受け取ることができるようになったのです。アナログ・レコードは、3,000円で買えるアートという、芸術が市民権を得たという意義を見い出せるだけでなく、値段では計り知れない感動を与えてくれる画期的なInformation Technologyでもあります。

PMCは、アナログ・レコードをとおして、本学学生のものづくりをはじめとする各専門分野に役に立つ観察眼や感性を得てもらうためにスタートしました。それは、音楽という時間のアートでもあり、イメージや概念を具体化した芸術作品です。ひとつの作品のために費やされた情熱に、多くの人たちが今もワクワク、ドキドキさせられています。アナログレコードは過去の遺物ではなく、これからますます私たちをインスパイアしてくれるのかもしれません。