「パラメトリック/スポンテニアス:進化する研究」
"Parametric/Spontaneous: Research in progress"
【開催場所】
金沢工業大学 未来デザイン研究所
〒150-0001東京都渋谷区神宮前1-15-13  Tel:03-5410-8379
【開催日時】
2004年3月22日(月)〜4月3日(土)の11:00〜18:00 【日曜閉場】
* 初日の3月22日(月) 18:30〜20:30 レセプションを行います
 
【コンセプト】
科学技術が大きな進歩を遂げた結果、私たちは今、人工的なシステムに囲まれて暮らしています。「人間性」の意味や文化の発達過程に思いを馳せると、人は、本当は自らを自由にするためにこうしたシステムをつくろうとしたのではないでしょうか。ひょっとしたら、こうしたシステムを開発した目的はつねに、私たちの行動の「自発性」を保つためだったのかもしれません。私たちがこの「自由」を守るため、あるいは守ろうとして実に多くのシステムに依存しているということは、考えてみれば皮肉なことです。
多くのシステムが悪用・誤用され、非合理的な力が世界の各地で勢いをつけ始めたため、私たちが「自由」を失うおそれは今や現実のものとなってきました。私たちは日常生活における「人間性」の豊かさを失いつつありますが、それは仕事や教育や政治、さらには社会生活までもが特定のシステムに管理されているという事実と無関係ではなさそうです。だからこそ、一人ひとりが数字に置き換えられてしまうことに私たちは反発し、また将来に対する不安があるからこそ、システムの持つ非人間的な本質に目覚めるようになったのでしょう。
しかし、どの時代においても、システムの開発はクリエーティブなプロセスの一部を占めていました。アートやデザインの世界にデジタルという手法が台頭するにつれ、私たちはサイズや色や音量といった多くの要素(パラメーター)の値をクリエーター自身が設定できるパラメトリック・システムの価値に気づくようになりました。こうしたパラメトリック的な考え方は、非常に合理的でありながらも自由な解釈を許す表記法を持つ音楽の世界では以前から当たり前のことでした。音楽以外でも、絵画や建築から陶芸や服飾のデザインに至るまで、偉大な作品の大半は、明確に定義づけられたパラメーターに基づいています。
「パラメトリック」とは理性的な決定またはある程度の前提条件というものを含意しています。すなわち、創作が始まる前にすでに決まっている何かがあるということです。しかし、ジャズとか日本の書道といった最も自発性を重んじる類の芸術やデザインのメソッドを見てみると、自由なインプロビゼーション(即興)が往々にして、明確に定められたパラメーターの中で行われていることに気づきます。音楽の場合は耳慣れたメロディやコード進行が、また書道の場合は1本の筆と墨と和紙がパラメーターです。
創作活動のベースとなっているこうしたパラメーターを理解することは、私たちを待ち受けているとてつもない創作の可能性を理解する上で重要です。今回のエキジビションは、こうした「パラメトリック・システム」に対する未来デザイン研究所の考え方に焦点を当て、その歴史的背景や興味深い可能性についてご紹介するものです。

【出展作品】

1. アルブレヒト・デューラーの教科書『計量法』(1525年、初版)
金沢工大の「工学の曙」文庫と名付けられた稀観書のコレクションは、全1,202冊という規模もさることながら、15世紀以降の主要な科学技術上の業績の初版本をほとんど揃えた世界的にも貴重なコレクションです。
その中に、ドイツ・ルネサンス期の画家、アルブレヒト・デューラーの本が2冊あります。デューラーは、「メランコリア」をはじめとする銅版画やペインティングで有名ですが、実はこの本のことはあまり知られていません。
比例理論を学んだ彼は、正確な形態を構成するための人体比例論や透視図法などの研究を続けました。さらに数学理論や立体幾何学等の研究を進め、集大成したのがこの本です。これを見ると、デューラーの表情豊かな絵画や銅版画が彼の自然観察から生まれた数学や幾何学で裏打ちされていることが分かります。デューラーは、未来デザイン研究所にとっても重要なインスピレーションの源泉です。

2. コミュニケーション・カーテン
IT化の進展に伴い、私たちの家庭にもエレクトロニック・コミュニケーション・システムが浸透しつつあります。特に、埋め込み式コンピューターやユビキタス・コンピューターが各種家電製品とホームシステムを結び、壁いっぱいの巨大ビデオスクリーンの価格が下がり、遠隔地にいる人たちとのコミュニケーションが簡単にできるようになれば、将来の家の環境にも大きな影響を及ぼすことでしょう。
今日、テレビ、ゲーム、携帯等の技術はややもすれば家庭内のコミュニケーションを妨げるばかりか、社会的な問題にもなっています。しかし、これは技術がいけないのではなく、その適用の仕方に問題があるのです。
「コミュニケーション・カーテン」プロジェクトは、どうすれば家庭における大型ディスプレイ・システムのプラス効果を極大化できるか、を模索するものです。特に、1)薄型フレキシブルLEP(Light Emitting Polymer)ディスプレイ技術、2)アンビエント・インフォメーション・ディスプレイ・システム、3)アドホック・ピアツーピア・ネットワーク、4)日本の十二単にヒントを得た、色彩とパターンのみを用いたコミュニケーション言語を活用した実験を行っています。当日は、研究所の一角をリビングルームに見立て、ビデオシミュレーションを用いたプレゼンテーションを行います。また、宮中ご用達装束店として何世紀にもわたって装束の制作を手掛けてきた高田装束店(九段下)のご厚意で、色見本のオリジナルをお借りすることができました。これも必見です。

3. FDIロボット・プロジェクト
より安く、プログラムしやすくなったこともあり、ロボットはますます身近な存在となってきました。私たちは、家庭におけるロボットの将来の応用について考察を進めた結果、ロボット・デザインの最も重要な側面が、ベーシック・オペレーショナル・アルゴリズムとインタラクティブ・アフォーダンスの決定にあるように思えてきました。
 デザイン・プロセスに焦点を当てた今回のプレゼンテーションでは、おもちゃのような実験的プロトタイプを用いながら、技術あるいはデザイン上のインスピレーションというものをお伝えしようと思っています。

4. オートジェネレーション(自動生成)
デジタル技術はほとんどすべてのクリエーティブの分野に影響を与えており、大半のクリエーターたちはクリエーティブ・プロセスのパラメトリック・コントロールに馴染んできています。そうした中で、どこまでをアーティストが決め、どこまでをコンピューターに任せるのか、といった問題も浮上してきています。
 私たちが特に関心をもっているのは、「オートジェネレーション」(自動生成)です。アーティストの関与を意図的に最小限に抑えたプロセスのことですが、このプロセスはしばしば見事なまでに「自然発生的」な芸術作品を生み出します。今日、これと似たようなシステムは、複雑なロボットや建築システムの生成や、モーツアルトのような作曲家が作曲した作品と区別がつかないような音楽をつくるのにも用いられたりしています。今回は、そのような自動生成システムを活用したビデオ作品、デザイン、音楽などを皆さまがたにご覧に入れます。

― アズビー・ブラウン所長の略歴 ―
1956年 アメリカ カリフォルニア州生まれ
1980年 イェール大学 彫刻科卒業 日本建築及び日本美学を専門に研究
1988年 東京大学建築科 修士課程終了
1989年 東京大学工学部 博士課程に入学、満期終了
1994年 金沢工業大学 建築系助教授就任
2003年4月1日 金沢工業大学 未来デザイン研究所 所長就任
2004年4月1日 金沢工業大学 メディア情報学科助教授就任予定

主な著作物
「The Japanese Dream House」 講談社インターナショナル 2001年
「Small Spaces」 講談社インターナショナル 1993年
「The Genius of Japanese Carpentry」 講談社インターナショナル 1989年

主な展覧会
2003年 「器用な創造者達vol.1-建築家の器」 グループ展
【於:エキジビション・スペース/ 東京国際フォーラム】
1998年 「Oneness」  グループ展/ 出展及び展覧会企画ディレクター
【於:川崎IBMギャラリー】
1997年 「Art Today '97 」 グループ展
【於:セゾン美術館】
1994年 「人間の条件」 グループ展 
【於:スパイラルホール】
1993年 「Art Today '93 」 グループ展
【於:セゾン美術館】
1993年    「Standard Discrimination Standards」 岡崎乾二郎との2人展
【於:川崎IBMギャラリー】
1992年 「Free Concert」 個展
【於:細見画廊】 
1992年    「Dead Men Read No Books」 個展
【於:コンテンポラリー・アートセンター(ニューオリンズ)】 
1991年    「21回サンパウロ ビエンナーレ」 
【於:ブラジル サンパウロ】 



 
Copyright (c) Kanazawa Institute of Technology. All rights reserved